2025 September 1

【技術コラム】 第1回 オペアンプの仕様を考えてみよう

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オペアンプとは?

オペアンプは基本的に入力端子-IN、+IN、出力端子OUTと電源端子V+、V-の5つの端子からなります。
オペアンプは増幅度AVOLで+IN、-INの差分を増幅して出力します。

VOUT=AVOL(V+INーV-IN

オペアンプを動かすときは、外付け抵抗で入力に電圧を戻して(負帰還をかけて)使います。そうすることで、外付け抵抗の比だけで出力を決められます。

現実にはオペアンプ自身が誤差を持っているので、オペアンプの電気的仕様を考える必要があります。

色々な回路構成(参考)

オペアンプは、出力信号を入力端子に戻して(負帰還をかけて)使います。
そうすることで、外付け抵抗値の比だけで出力を決められます。いろいろな回路構成をとることができます。


オペアンプの仕様を考えてみよう

入力オフセット電圧とは、入力がゼロの時にオペアンプの出力VOUTをゼロにするために必要な入力電圧です。

オフセットドリフトは入力オフセット電圧の温度変化(uV/℃)で理想オペアンプであれば、オフセットドリフトはゼロです。現実はオフセットドリフトが存在します。

これらのズレはセンサなどの微小な信号を増幅してA/Dコンバータに入れる時の精度を悪化させます。

LTspiceで確認してみましょう

アナログ・デバイセズ社の”ゼロドリフトオペアンプ”:ADA4522-2をLTspiceで確認してみます。






25℃でのオフセットは1μA(データシートで5μV(max))、オフセットドリフトは0.5μV/125=4nV/℃(データシートで22nV/℃(max))となりました。
極めてオフセットドリフト電圧/ドリフトの小さい製品であることが分かります。

(*)出典:アナログ・デバイセズ社 アプリケーションノート
https://www.analog.com/media/en/training-seminars/tutorials/MT-037.pdf

ADA4522-2の入力オフセットが小さい理由は?

ADA4522-2は差動入力を高い周波数(4.8MHz)をチョッピングしてオフセットを高周波へ追いやったのちに800kHzのローパスフィルタで4.8MHzの高周波ノイズを除去することで極めて小さいオフセット電圧/ドリフトを得られています。
チョッパ方式は動的にオフセットを自動でキャンセルするので工場でのトリミング工程はありません。



(*)出典:ADA4522-2データシート
https://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/ada4522-1_4522-2_4522-4.pdf

Analog Devices社 HP
https://www.analog.com/jp/resources/analog-dialogue/articles/understanding-and-eliminating-1-f-noise.html

LTspiceで確認してみましょう(続き)

次にアナログ・デバイセズ社の”高精度オペアンプ”:ADA4510-2を確認してみます。ADA4510-2は入力オフセット電圧、オフセットドリフト、ノイズ、周波数帯域、応答性すべて優れた万能選手です。





25℃でのオフセットは4uV(データシートで20uV(max))、オフセットドリフトは8.5uV/125に≒0.07uV/℃(データシートで0.5uV/℃(max))となりました。
万能選手でありながら、オフセット電圧/ドリフトも優れていることがわかります。

(*)測定回路の出典:アナログ・デバイセズ社 アプリケーションノート
https://www.analog.com/media/en/training-seminars/tutorials/MT-037.pdf

ADA4510-2の入力オフセットが小さい理由は?

ADA4510-2は、アナログ・デバイセズのDigiTrim™技術を用いることで、従来のCMOSアンプに比べ、より高い精度を実現します。
このDigiTrim™技術は、デジタル重み付け電流源をプログラムすることでオフセットを最終テスト工程で調整します。
最終テスト工程でアッセンブリ時の機械的ストレスによるオフセット電圧およびドリフトを補正できるという大きな特長があります。



(*)出典:
ADA4510-2データシート https://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/data-sheets/ada4510-2_jp.pdf

Analog Devices社 HP
https://www.analog.com/jp/lp/001/digitrim-technology.html
 

まとめ

入力オフセット電圧とは何か、オフセットドリフトとは何かについて解説しました。アナログ・デバイセズのチョッパ方式のゼロドリフトオペアンプADA4522-2、アナログ・デバイセズのDigiTrim™技術を用いた高精度アンプADA4510-2についてLTspiceシミュレーションで確認してみました。

データシートの入力オフセット電圧、オフセットドリフトを汎用オペアンプと比較し下記にまとめます。チョッパ方式やDigiTrim™が従来の汎用オペアンプと比べ、桁違いに優れた性能を持つことが分かります。



*Vsys=30V各々データシートから抜粋

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今後の予定(コラム内容・Webinar)

■第2回技術コラム ➡10月1日更新予定!

第2回 CMRRとは、アンプのトポロジーによる違い

■第3回技術コラム ➡11月1日更新予定!

第3回 AC特性とステップ応答特性

■オペアンプについてのWebinar ➡12月開催予定!

第1回~第3回の技術コラムについてのハンズオンセミナー


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