
目次
・第1回 : オペアンプの仕様について
・第2回 : CMRRとは?アンプのトポロジーによる違いについて
・第3回 : 周波数特性とスルー・レートについて
・Webinar : Analog Devicesの手のひらサイズ計測器セット:「ADALM2000」を使ってオペアンプの実験をしてみよう
コラムを動画で見たい方
オペアンプの周波数特性とは?
オペアンプの周波数特性とは、小振幅(※)におけるオペアンプ回路のフィードバックゲインを表す指標のことです。非反転増幅器の抵抗の比を変えることでフィードバックゲインを変えて周波数特性を取ったものを以下に示します。
・ 曲線が0dBになる周波数をクロスオーバー周波数と呼びます
・ ゲインGが設定値より-3dB低下する周波数をBとすると、ゲインGとBの掛け算G×Bは一定となり、これをGB積と呼びます

(※)小信号の出力振幅は10mVpp程度となります。
出典:ADA4077データシート
参考資料:一緒に学ぼう!石井聡の回路設計WEBラボ
WCJ-002 SPICEツールで適切な周波数特性と 異常発振しないOPアンプ回路を実現する 【基礎編】 3. 周波数特性の検討(実際のOPアンプの特性と比較) | Analog Devices
オペアンプのスルー・レートとは?
オペアンプのスルー・レート(slew rate:SR)は大振幅(※)における出力電圧の最大変化率のことで、通常はV / μsで表されます。スルー・レートが高いほど入力に対する追従性が良くなります。

(※)大信号の出力振幅は2Vpeak程度となります
出典:アナログ・デバイセズ社 OP大全 第2部 「OPアンプの基礎」
OPアンプ回路の基本から応用まで、OPアンプ大全を無償提供中 | アナログ・デバイセズ
参考資料:一緒に学ぼう!石井聡の回路設計WEBラボ
WCJ-002 SPICEツールで適切な周波数特性と 異常発振しないOPアンプ回路を実現する 【基礎編】 3. 周波数特性の検討(実際のOPアンプの特性と比較) | Analog Devices
スルー・レートとパワーバンド幅の関係は?
出力が大振幅のとき、スルー・レートの影響により周波数を高くしたとき波形が小さくなるだけでなく、歪みや位相遅れが発生します。最初に述べた小振幅での周波数特性ではこのような波形の歪みは起きません。
波形が歪まずに増幅できる限界周波数は、スルー・レートと振幅により決まり、その関係式を(1)に示します。この限界の周波数をFPBW(full Power Band Width):パワーバンド幅と呼びます。

出典:アナログ・デバイセズ社 OPアンプ大全 第2部 「OPアンプの基礎」
OPアンプ回路の基本から応用まで、OPアンプ大全を無償提供中 | アナログ・デバイセズ
参考資料:一緒に学ぼう!石井聡の回路設計WEBラボ
WCJ-002 SPICEツールで適切な周波数特性と 異常発振しないOPアンプ回路を実現する 【基礎編】 3. 周波数特性の検討(実際のOPアンプの特性と比較) | Analog Devices
高精度オペアンプ ADA4077の周波数特性
高精度オペアンプのADA4077は、定番オペアンプのOP07やOP77の後継の製品で、周波数特性、スルー・レートが改善された製品です。ADA4077の周波数特性をLTspiceを用いてシミュレーションしてみます。
シミュレーションの結果、クロスオーバー周波数は、ほぼ3.9MHzとなり、データシート記載の3.9MHzと合致しました。
また、GB積は5.3MHzでした。データシートでは3.6MHzです。

高精度オペアンプ ADA4077のパワーバンド幅
ADA4077のスルー・レートはデータシートで1.2V / μsになっています。出力10Vpeakを見るためには(1)式よりパワーバンド幅=19kHzとなります。わかりやすくするため50kHz、入力5Vpeakとし、2倍の非反転アンプでシミュレーションしてみました。波形が三角になり歪むことが分かります。

出典:アナログ・デバイセズ社 OPアンプ大全 第2部 「OPアンプの基礎」
OPアンプ回路の基本から応用まで、OPアンプ大全を無償提供中 | アナログ・デバイセズ
高精度オペアンプ ADA4620の周波数特性
ADA4620は、36Vの高精度JFET入力オペアンプで、極めて低いバイアス電流、低ノイズ、低消費電流でありながら、GB積が16MHzと広帯域の特性も併せ持つ製品です。ADA4620の周波数特性をシミュレーションしてみます。
シミュレーションの結果、クロスオーバー周波数は、19MHzとなり、データシート記載18MHzとほぼ一致しました。
また、GB積はほぼ17MHzで一定でした。データシート記載は16.5MHzなのでほぼ一致しました。

高精度オペアンプ ADA4620のパワーバンド幅
ADA4620は、高精度ながらスルー・レートが30V / μsと高速性も併せ持つオペアンプです。出力10Vpeakを見るためには(1)式よりパワーバンド幅=480kHzとなります。わかりやすくするため800kHzで入力を5Vとし、2倍の非反転アンプでシミュレーションしてみました。
先ほどのADA4077と比較して、桁違いに高速であると分かりました。

ADA4620が高速な理由は?
ADA4620は、入力段に新技術のスルー・ブースト回路を採用しており、印加差動電圧に応じてバイアスを変化させています。スルー・レートが高く、大きな差動電圧が入力されると、バイアス電流が増加し、変動する信号をアンプが追跡できるよう動作しています。これにより、30V / μsを超えるスルー・レートが可能となりました。

まとめ
オペアンプの特性として周波数特性、スルー・レートおよびパワーバンド幅とは何かについて、これらの所量をADA4077、ADA4620の2製品を例としてLTspiceでのシミュレーション結果をご紹介いたしました。
最後に2つの製品をデータシート記載値としてまとめました。
ADA4077とADA4620はノイズ、オフセットドリフトに関して同等ですが、ADA4620 のほうが低入力バイアス電流、広帯域、高速だと分かります。

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【対象者】
・ オペアンプの設計をこれから始めたい方
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